終末期に食べられなくなると死んでしまうという「嘘」|「うらやましい孤独死」の著者に聞く終末期ケア

インタビュー

医師の白衣は「あなたたちとは別世界の人だ」というピラミッド構造の象徴

今までの話をうかがっていて、幸せな最期を迎えるためには、医師・看護師・介護職・利用者さんが上下関係ではなくフラットな関係であることが大切だと感じた。取材当日も森田氏はTシャツにキャップをかぶり、ジーンズという非常にラフな格好だった。ラフな洋服で往診にも行くということに何か理由があるのだろうか。患者さんと接する際に、敷居を感じさせないための工夫をうかがった。

 

森田洋之

「まずこんな服を着るとかね。白衣は絶対着ないです」

 

医者の白衣は何のために着るのだろうか。外科医など、血が飛び散るなどなら分かるのだが、精神科医などは唾が飛ぶ程度だろうし、服が汚れるとも思えない。

 

「白衣ってみんななんで着るんでしょうね?

あれって何でやっているかというと、白衣を着ている自分はあなたたちとは別世界の人間ですよという記号なんです。

もっと言えば、あなたたちより上にいる医者だから、あなたたちは従いなさいというようなピラミッド構造の象徴みたいなもんですよね。それじゃなかったら着る意味ないじゃないですか」

 

森田氏はそういったピラミッド構造が嫌いだ。なので、白衣は着ない。なるべくそこら辺のおじさんと同じようなトレーナーやTシャツを着る。ジーンズで行くと「もうちょっとしっかりしなさい」と突っ込まれることもあるという。

 

「上よりも下にいきたい感じですね。それくらいでやっとちょうどよくなるんじゃないかと思うんですよね」

 

介護施設で面会謝絶にすることで守っているのは利用者さんのことなのか

最期にこのコロナ禍で介護職の人に伝えたいことをうかがった。

「もういい加減、みんな気づいていると思うんだけど。

コロナ禍だから面会謝絶にすることで、一体だれを守っているんだろう。

利用者さんじゃないでしょう」

 

このコロナ禍で、社会の司令塔が医師になってしまっている。これまで、病院の中だけで権力を振るっていた医師が、病院の枠を超えて社会を支配しだしたかのようだ。そして、介護施設は利用者さんを管理する刑務所となってしまっている。それを正義だと思っているし、間違っていないかもしれないが、管理する側もされる側も疲れる。国民全部が管理下に置かれてしまっている。そんな現状を森田氏は危惧している。

 

面会謝絶の中、大切な人と会えない中で亡くなるのが幸せなことか。その死を家族は受け止められるのか。ものすごくいい最期だったと涙を流して語れるのか。コロナ禍の今だからこそ、本当に幸せな「最期」とは何なのかをあらためて考えたい。そんな思いで取材を終えた。

 

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