ボイスチェンジャーがないと話せない・親が死んでも葬儀屋への電話ができないひきこもり達 ~ネット配信者が仲介役に~

動画障害者ルポ

【数少ない成功事例と罵倒される日々】

 

「数は少ないですが、ひきこもりが社会復帰した成功事例はあります」

 

それは、公園にトレードマークのカードを隠してひきこもりの人たちが、取りに来るかという実験的な配信の時だった。

あるひきこもりは、夜中にそのトレードマークを取りにきた。そして、そのことをwebサイトにアップしたという。それがきっかけで、原科さんと誰もいない深夜の公園に散歩に行くようになった。

 

元々はひきこもりながら、アフィリエイト収入の30万円で暮らしていた彼はその作業の大変さから一般企業で派遣として働く道を選んだ。目に見える成功は、その1回くらいしかないがそれでも原科さんの放送を通じて、社会との接点を持つきっかけを得る人は多い。

 

「ひきこもりたちの感覚を説明するときに、よく並列駐車と縦列駐車を例に出すんです。並列駐車をしていれば、横の車が見えますが縦列駐車だと後ろの車が見えない。あんな感じですね。後ろの車の存在にまで気づかない」

 

発達障害の特性として「目の前に見えるものしか存在しない」と感じるというものがある。

 

想像力を働かせ、縦列駐車の後ろにある車の存在に気づけない。だから、目に見えない人の気持ちや感情が想像しにくい。その特性がコミュニケーションをとる際に、摩擦を産む。

 

原科さんが長期間支援をしていても、そのことに対する感謝の気持ちや言葉が出ることはほとんどない。

 

「大学で不適応を起こして、登校拒否になった子にボランティアで関わったことがあります。何度もすっぽかされ、自腹で新幹線代も払い、時間もお金もかかりました。だけど、校門までは入れたときに出た言葉は『ありがとう』ではないです。『よしさんの体臭がたまらなく臭かった』と言われたんです。傷つきますよね(笑)」
それが原科さんのいう、縦列駐車で背後の車が見えないという例えにつながる。

 

そこまでに原科さんがかけた労力や時間には全く目がいっていないのだ。なので、感謝の気持ちを持つところまでいくことが難しい。

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