かつて、雑誌にて夜の街で働く女性たちをインタビューするコーナーを担当したことがあった。多くの女性は、お店からあてがわれたワンルームのマンションに住んでいた。
カメラマンと同行して女性の部屋に行くと、小型犬がギャンギャンと吠えていた。狂ったようにグルグルグルグル回っている。爪が床に当たる、チャカチャカチャカという音が耳障りだ。
いつから飼っているんですか? と質問すると、女性は
「この子は2ヶ月前にお客さんに飼ってもらったんです!!」
と満面の笑みで答えた。
驚いたことに、彼女は犬に名前をつけていなかった。
今はだいぶ減ったけれど、当時は繁華街の中に決まってペットショップがあった。酔っ払ってペットショップに行って、客にねだって買ってもらったのだという。そのワンルームは新宿の都心部の高層階にあった。
毎日散歩につれていくのも一苦労だろうと思う。
「あ、この犬は散歩させなくていいんだって。小型犬は本当は散歩させなくていいらしいですよ?」
と言われた。散歩させなくても室内だけで必要な運動量をまかなえるのかもしれない。でも、ずーっとこの犬は部屋の中に居続けて、グルグルとバターになりそうな勢いで回り続けているのかと思ったら陰鬱な気持ちになった。犬は十年以上生きる。彼女は十年以上もこの犬を飼い続けることができるのかは疑問が残った。犬、猫、爬虫類、など動物を飼っている人は多く、そのつど少し気が滅入った。
動物を飼っている人たちに悪意はなかったろうが、たとえ悪意がなくたってペットは不幸になるのだ。