一番、困ったのは、摂食障害だった。とにかく、目の前にある食べ物を手づかみで食べられるだけ食べる。そして、その後、すべて吐き戻す。部屋は常に嘔吐物のすえた臭いに満ち、すべての家具がかびた。おそらくまともに食事もしていなかっただろう息子は、目の前に食べ物があると、食べられるだけ食べてしまう。吐き戻し、こちらを確認する姿は、まるで「本当に僕を見捨てないのか」と親を試しているようだった。当時まだ2歳の子だ。筆者は心中を考えるほど悩んだ。

嘔吐物で常に部屋はかびだらけだった
そんな状態の息子を、母子自立支援施設・療育センター・保健センター・病院・相談支援員さんなど、様々な人たちが支えてくれた。
コンビニでもお友だちと遊んでいても、吐き戻す息子にあからさまに嫌な顔をする人が多かった。それでも、「子どもの体調不良なんかいくらでもある」とかばってくれたり、「自分で調べてみたけど、こういった関わり方でいいのか?」と聞いてくれたりする、地域の人に支えられてなんとか乗り切った。
日本では、発達障害というと、先天的なものに関してしか議論になっていない。だけど、息子のように育った環境によって、同じ症状が出ることも多い。虐待サバイバーと言われる人たちの中には、3歳までの不適切な養育を引きずる人も多い。
現在の息子は、愛着障害は寛解(全治とまでは言えないが、病状が治まっておだやかなこと)したと診断が下っている。摂食の問題も独学で勉強した結果、ある言葉をきっかけにピタッと止んだ。だけど、現在も発達障害診断はついたままで、支援学級に通っている。