それではホームレスが亡くなった場合、どのような扱いをされるのだろうか?
意外と知らない人が多く、質問されることが多い。
まずホームレスの遺体が発見されると、発見者などが警察に通報し、警察官が現場に確認に向かう。
そこで身元がわかった場合は、家族に連絡がいく。
免許証や保険証などを持っている場合はすぐに判明するが
持っていない場合はなかなか身元は分からない
結局身元が分からない場合が多い。
調査をして身元が判明しない場合は「行旅死亡人」の扱いになる。
「行旅死亡人」とは、名前、本籍地、住所などがわからず
遺体の引き取り手もいない死者のことだ。
行旅といっているが、旅の最中に亡くなったわけではなくても、行旅死亡人になる。
政府も全く何もしないわけではない。
政府が一般国民に知らせる事項を編集し、毎日刊行されている“官報”には
行旅死亡人の情報が載せられる。氏名・本籍・住所は不明と書かれるが
亡くなった時の本人の特徴(体格、頭髪、服装)や発見された日時と場所
推定死因も記載される。官報には
「心当たりのかたは連絡ください」と書かれている。
政府的には
「官報に載せたということは全国民にお知らせした」
ということになるのだろうが、ただ現実には官報を読んでいる人はほとんどいないだろう。
それどころか官報の存在も知らない人が多い。
「インターネット官報」は、パソコンやスマートフォンで簡単に読むことができるので
どのようなものか一度見て欲しい。
それでも家族が身元不明になっていたら官報を調べるかもしれないが
それでも何年も何年も調べ続ける人は少ないだろう。
そして警察や政府の捜査で、家族が見つかった場合も
引き取りを拒否されることが多い。
先に書いた、免許証などを持っていて
あっさりと身元が判明した場合にもやはり拒否されることがある。
ホームレスになった人にはホームレスになった人なりの事情がある。
家族からはおおいに恨まれている場合も少なくない。
「家族は捨ててきたから、恨まれていると思う。合わせる顔はない」
と語るホームレスは少なくない。
そして遺体を焼くのにはお金がかかる。
火葬代は最低でも10万円程度はかかる。
そしてそれなりに手間もかかる。
亡くなった人に、恩を感じていなかったら、引取を拒否しても仕方がないだろう。
遺体は、亡くなったことを確認した自治体に受け渡される。
ただこれは書類上の話であり、遺体は警察当局から直接葬祭業者に運ばれて
そこで保管される。
自治体は、死亡の届け出と火葬許可を役所内で取る。
そして、葬祭業者は火葬を実施してお骨になる。
お骨についてはその後3年間はそこで保管される。
その後、お骨の引受人が現れない場合、合葬にされる。
火葬や官報の掲載料などの費用については、自治体が立て替えることになる。
そうしてホームレスの“死”は跡形もなく“処理”される。
日本には、人知れず亡くなり、誰だか分からないまま
埋葬されていく人が少なからずいる。
そのことは忘れずにいたい。