そして、SSRI、SNRI、NaSSAなどの抗うつ薬は、一部の悪質な精神科医により多剤投与され社会問題となった。これらの向精神薬には当然、副作用があり、その説明なしで「安全な薬」として処方の乱発が起きた。
実は筆者自身が2012年~2013年頃に、多剤投与の被害に遭っている。そのことに触れておく。受診当時、筆者は東京に住んでおり「抑うつ状態」と診断され、1種類の抗うつ薬と睡眠導入薬を処方された。抑うつ状態とは抑うつ気分が強い状態である。このような状態がある程度以上、重症で、長期に渡り続いたときに、初めて「うつ病」と診断される。
筆者の場合は「うつ病」未満の状態だった。
その後、筆者は地方都市へと転居することとなる。かかりつけ医も変わった。そこから、処方薬はみるみる増えていった。3か月通院後には、15種類もの向精神薬を処方されることとなった。その際、医師より副作用の説明はほとんどなかった。向精神薬の作用は「鎮静」を目的としているものが多い。15種類の薬を飲んでいた時期、筆者は眠気が強く、昼間でも起きていられない状態となり、一日眠ってばかりいた。その結果、何が起きたかというと、眠っていて筋肉を使わないため、筋力低下を起こした。
足元はふらつき、指の筋力が落ちているため、手にとったものを落としてしまう。近所に買い物をしにいくにも、たった5分歩くことすらきつく感じ、家にひきこもるようになる。家の中で歩くことすら苦痛となり、這って移動することが増えた。たったの3か月でその状態だ。元のように歩けるようになるには、リハビリが必要だったほどだ。それくらい、向精神薬の副作用というのは恐ろしいものだ。筆者の経験や向精神薬の副作用については、また別の記事で書くが、診断名は「うつ病」から「双極性障害」「統合失調症」とどんどん増えていったのだ。
このような事例が、全国で起きた。厚生労働省は2006年頃から、特にうつ病に効果があるとされる向精神薬の処方に対し、規制と罰則を強化した。そして、「うつ病ブーム」は下火になっていった。
そして、次に起きたのが「発達障害ブーム」だ。発達障害に関しても、うつの病の疾患喧伝(けんでん)と同じく、チェックリストが出回り、抗ADHD薬であるメチルフェニデート徐放薬(コンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)の3種類の売上が急激に伸びている。