ここで、大人の発達障害のチェックリストをご紹介する。
1、物事を行うにあたって、難所は乗り越えたのに、詰めが甘くて仕上げるのが困難だったことが時々ある。
2、計画性を要する作業を行う際に、作業を順序だてるのが困難だったことが時々ある。
3、約束や、しなければならない用事を忘れたことが時々ある。
4、じっくりと考える必要のある課題に取り掛かるのを避けたり、遅らせたりすることが、頻繁にある。
5、長時間座っていなければならない時に、手足をそわそわと動かしたり、もぞもぞしたりすることが頻繁にある。
この項目も、人生で一個もこのような状態になったことはないと断言できる人はどれくらいいるのだろうか。こういったチェックリストをもとに、教育関係者や一般の人にいたるまで、多くの人が不安に駆られ、発達障害外来に殺到している。
しかし、ここで問題なのは、チェックリストを見て病院を受診したところで、発達障害の診断(というよりも精神疾患全般といってもいい)基準に明確な科学的根拠はない。
よく勘違いされているが、WISC(ウィスク)検査やWAIS(ウェイス)検査はあくまでも知能の測定を目的とした検査であり、発達障害の見分けることを目的としたものではない。
発達障害は「脳機能障害」と言われているが、誠実な医師であれば「脳機能障害であると考えられている」と表現するだろう。なぜなら、現時点で、科学的に証明されていないからである。なので、最終的には医師の問診に診断が委ねられている状況だ。しかし、良心的な医師ばかりではないのは、過去の歴史を振り返れば分かるし、発達障害に関する専門医となると、数が限られているのが現状だ。
そんな状態であるにも関わらず、今起きているのが、幼少期からの多剤投与の問題だ。2018年4月、厚生労働省は、多剤処方の規制を強化している。しかし、それはあくまでも同クラス内(同じ薬の効き目の薬内)の多剤併用であり、カクテル処方(単一薬効の薬を単剤で処方するのではなく、睡眠薬プラス抗うつ剤のような複数の効き目の薬を一緒に処方すること)に関してではない。
多剤投与の害とその健康被害は将来にわたり、深刻な影響を及ぼす。私たちはこの「発達障害ブーム」をどう受け止めていくべきか。そして、「ちょっと変わった人」や「育てにくい子」に対し、安易に「発達障害」というレッテルを貼り、社会や普通学級から疎外することの恐ろしさを一度、考えてみてほしい。
もちろん筆者は薬を全否定する立場でもなければ、筆者自身も薬を定期的に服用している。
しかし、関係者への取材から、本来であれば最優先であるべき環境調整が
おろそかにされているという現状もある。
今後の記事で、発達障害医療・精神医療の歴史や現状を詳しく追っていくつもりだ。こちらの記事も合わせてお読みください。
■発達障害に関する誤解と偏見 ~発達障害者は全員コミュ二ケーションが苦手?メディアにより偏った発達障害者へのイメージ~
■日本の精神医療と脱施設化の課題 ~隔離の歴史と障害者への根強い偏見~