その物件は、高級住宅地にあるマンションの一室だった。住人は女性だ。賃貸ではなく持ち家ということだった。
依頼人の都合で作業は夜に行われることになった。部屋の前にはゴミがパラパラと散らばっていた。ゴミ屋敷の部屋の前は、部屋からこぼれ落ちたゴミが落ちていることが多い。
ドキドキしながらドアを開けると、ゴミは胸の高さまであった。3LDKのかなり広い部屋だったが、どの部屋も埋まっていた。
パッと見、服や本などの物品が多いようだった。そして、キンッと頭に響くような、強いアンモニア臭がした。
今は預けているが普段は猫を飼っているそうだ。ペットが飼われている部屋は、非常に質が悪くなる。その部屋も、猫が所構わず糞尿をしており、ほとんどの物品は汚染されていた。
とにかく、物を減らさないとどうしようもないので、ドンドン捨てていくことにした。掘り出した衣類は糞まみれでカビが生えていた。迷わずにごみ袋に入れる。
「ちょっと!! 勝手に捨てないでよ!! それゴミじゃないんだから!!」
と怒りの声が飛んできた。
住人が言うには、大事な物、高級な物がたくさんあるから、勝手に捨てられたら困るという。全部、一旦は聞いて欲しいと言われた。
汚物にまみれた物品を取っておきたいというとは思っていなかったから、単純にビックリしてしまった。
「この部屋はゴミ屋敷じゃないんだから!! だって全部いるものだからね。全部取っておくとは言わないけど、捨てる時は、了承をとってください!!」
と言う。
「ゴミ屋敷じゃない」
という発言にさすがに耳を疑った。
そして、なぜゴミ屋敷だと思っていないのに、清掃業者を呼ぼうと思ったのだろう? と素直に疑問に思った。