「こないだクーラーが壊れちゃって。それで修理の業者を呼ぶことにしたんだけど
『この部屋で作業するのは無理です』
って言われて。それで仕方なくお願いしました。でも基本的に物は捨てたくないんです」
と、憤懣やるかたないといった雰囲気で話した。修理業者が断った気持ちも痛いほど分かる。
しかし部屋にあるゴミの量は膨大だ。一つ一つ聞いていると、大変な時間がかかる。
しかし客にそう言われたら、業者はもちろん従うしかない。
季節は夏だったが、クーラーは壊れている。暑い中での作業は、体力を大幅に消耗する。
やっとで作業が終わった時には、部屋に朝日が差し込んできていた。
ゴミ屋敷の清掃は、終わった時にずいぶんスッキリした気持ちになる場合が多い。
「この部屋って、こんなに広かったんだ!!」
と驚かれる依頼者も少なくない。
ただ、その部屋は、清掃が終わってもあまりスッキリ気分にはならなかった。
多くの物品が残されたままだったからだ。物が多すぎて部屋が散らかってしまう人は
「部屋の大きさと、部屋に置ける物の量」
のバランスが取れていない人が多い。簡単に言えば物が多すぎるのだ。
どれだけ片付け上手でも、量が多すぎれば片付けることはできない。
しかし、家主は部屋が片付いていないことはどうでも良いようだった。
「ちょっと、ジーンズと傘が見当たらないんですけど。捨てちゃったんじゃないですか?」
と怒った。記憶はなかったが、捨ててしまったかもしれない。そう謝ったが、彼女の中で物にたいする諦めがつかなかったようだ。結局、ゴミを積んだトラックの中から、それらの物品を探すことになった。その捜索は、違う場所で行われたため、僕は同行しなかった。結局、かなりの数の物品を部屋に持ち帰ることにしたという。