前回のルポでも書いたが、切れ味の悪い、パッとしない結論になる。
「たとえそうだとしても、
『ホームレスに悪い人はいない』
『ホームレスは全員働きたいと思っている』
と言っておいて間違いはないだろう。事態が悪くなることはないはずだ」
と思うかもしれない。そう思うからこそ、そのような発言をしているんだと思う。
だが、それは「ホームレスは全員悪党だ」とけなす人と立場が真逆なだけで、差別的であることはいなめない。
「『ホームレスに悪い人はいない』
だから手厚い保証をするべきだ。」
という訴えをしたとする。
しかし、実際には素行の悪い人はいる。
「『ホームレスは良い人だ』という前提で保証をした。しかし実際には『ホームレスは良い人ではない』のだから保証をしなくて良い」
という話になりかねない。
まとめるなら
「ホームレスに悪い人はいない。だから差別してはいけない」
という言説は、
「ホームレスは悪い人だ。だから差別をしてもよい」
につながりかねないから気をつけよう、という話だ。
ホームレスには良い人も悪い人もいるが、ホームレスというカテゴライズでレッテルを貼って差別してはいけない。
自立がむつかしい場合は、適切な社会保障を受けられるようにしなければならない。
障害者に関しても、同じような問題がある。
僕が小学校の時に、障害者に関するドキュメント映像を見せられた後に、
「障害者の人たちは、全員良い人です。天使のような人たちです。だから差別をしないようにしましょう」
というような授業を受けた。
当たり前だが、現実には、全員が良い人ではないし、天使のような人でもない。
勘違いしたまま、障害者と接する施設で働くことになり、ショックを受けた人もいるだろう。だが、
「障害者は良い人でなかった。天使ではなかった。だから差別する」
というのはもちろん間違っている。
揚げ足を取るようで悪いのだが、
「猫好きに悪い人はいない」
「バイク好きに悪い人はいない」
「芸人に悪い人はいない」
などというのも、間違っている。
あるグループに対して“悪”とレッテルを貼るのはもちろん駄目な行為だが、“善”とレッテルを貼るのも同じくらい駄目な行為なのだ。
日常でもつい、
「〇〇の人って、悪いよね」
って言いがちだと思う。
実際、僕も思わず言ってしまうことはある。
言いたくなった時は、少しだけ気をつけてみてはいかがだろうか?