とまあ、自分はまるでキチンとした人間だというような書き方をしてきたが、なんのことはない僕もそういう
『あえて酷い生活をする人』
だったので気持ちは分かる。
30代後半、仕事がたまり過ぎた時は、1日2時間しか眠れなかった。あえて横にならず椅子で寝た。いい加減なものを食べて、一日3箱煙草を吸っていた。
2ヶ月くらいそんな生活を続けていたら、逆に2時間しか眠れなくなった。そしてある日、仕事中に大量の鼻血が溢れ出し白いキーボードを赤く染めた。
その時、脳を支配したのは、
「こんなに頑張ってる俺ってすげえ」
である。
カルト宗教の信者のように、自分の身体がこんなにボロボロになるまで働いている俺って素晴らしいと思っていたのである。
そしてそれから2年くらいはひどい、睡眠障害に悩まされた。今でも鼻血は出る。
仕事マンが陥りがちな、罠だ。
脳が身体を虐めることで、嗜虐的な快楽と、被虐的な快楽を得ているわけだ。
ただ、脳も身体も結局は自分なので、損しかしていない。
肝心の仕事も、そんなボロボロな状態でやった仕事が、ベストだったとは到底思えない。
『寄生獣』(岩明均)は右手に寄生生物が取りついた高校生が、共生し共闘する漫画だが、2巻で、寝過ごして遅刻しそうになった主人公が寄生生物ミギーに対して
「おまえずっと起きてたくせになんで時刻に起こしてくんなかったんだよ!」
と怒るシーンがある。それに対してミギーは、
「………人間社会のことなんか知らん
きみが寝ぼうしたのは体が睡眠を欲していたからだろう……… 休むことはいいことだ きみの健康はわたしの健康でもある」
と答える。
主人公は
「はいはいなるほどね」
と取り合わないが、僕は体を壊した当時読み、これは大事なことだよなと思った。ミギーは反論してくれるが、私達の体は反論してくれない。
無理が祟ったら、無言で壊れる。
共倒れだ。
わざと、身体を雑に扱って、病気になってしまってから、
「病気になったのは誰のせいだ!!」
と言ってもおそいのである。
そして病気になったのは、概ね自分のせいなのだ。