盗みに依存する窃盗症「クレプトマニア」からの脱却|648日目の闘い

「勿体ないなと思いました。それで次に同じ場面に遭遇した時、捨てられてしまう位ならと思わず手が動きました。決壊した瞬間でした」
一度盗り始めてしまうとタガが外れ、毎日万引きをする日々が始まった。
「いわゆる専門的診断基準からすると、自分が欲しいものや自己使用目的に窃盗を行うのはクレプトマニアではないという考え方もあります。でも、アルコール依存症の人がお酒を、摂食障害の人が食べ物を盗む。それがきっかけで二次障害としてクレプトマニアが発症するパターンも多いんです」
彼女も自分が食べる物を盗っているうちに万引きという行為自体に依存するようになった患者の一人だ。
「自分が食べる物以外を盗ったことはありません。万引きしているのに何を言っているんだと思われるかもしれませんが、私は自分が盗んだ物は、汚い物だという意識があって。過食する為の物以外は盗らないと決めていました」
初めて万引きしてから約2年弱、彼女の葛藤は続く。
「悪いことをしているという自覚もあって、やめなくてはいけないこともわかってはいました。でも万引きをやめたいとは、思えませんでした。完全に万引きに依存しきっていました」
どんな依存症の場合でも、本人にやめたいという強い意思がなければ依存から抜け出すことは難しい。
そんな彼女が盗ることをやめる為の治療を始めたきっかけは、ズバリ警察に捕まったこと。
「最初に捕まったのは盗りだしてから半年程たった頃です。本来なら盗ったこと自体を反省するべきでしょう。でも、なぜ捕まってしまったのか、いつから目を付けられていたのか、上手く盗れなかったことを真っ先に反省しました」
この時、自分の思考が正常ではないと思い知る。けれど、その後も彼女は万引きを続ける。そして二度目に捕まったのを機に治療する決心を固めた。都内にあるクレプトマニア専門治療を行っているクリニックにて治療を開始した。
