Nさんの母親は、もしかしたら、Nさんがこうなることを心配していたんじゃないか?
心配しながらも、社会参加ができないNさんを、どうしていいか悩んでいたはずだ。
Nさんは、コミュニケーションが苦手なことで、福祉を頼ろうと思ったことがないし、いろいろな福祉サービスが存在することを知らなかった。Nさん親子のように、家庭の問題を相談できる場所を知らずにいたり、ひきこもりの状態の子どものことを恥じ、誰にも相談できずに、地域で孤立してしまう事例は多くある。これが「8050問題」の実態だ。
Nさんの叔父さんと話をしてみた。叔父さんは、自分の妹(Nさんの母親)が入院したときも、亡くなって葬儀をするときも、Nさんが動こうとしなかったことが不思議だったという。最初は、母親が亡くなってショックなのだろうと思っていたが、なにか違う。目の前のことに向き合って、喪主を務めなければならない立場なのに、必要な段取りをどう行っていったらいいか分からない様子だった。分からないなら、側にいる人に質問をすればよいのだが、それもできない様子だったという。
Nさんの叔父さんは、70代後半。Nさんは、「もしかしたら発達障害ではないですか?」と伺った。だが、叔父さんは発達障害というものを知らなかった。Nさんが発達障害であるとははっきり分からない。でも、亡くなった妹(Nさんの母親)も、Nさんが社会に出ていけない状態にあると分かって一緒に暮らしていたようだし、悩んでいたと思うと語った。
「8050問題」は当事者たちが隠そうとすることで、他人が介入しにくい。当事者親子が、このままでいいと、諦めているケースも聞く。