精神病院に潜入取材をしたら出られなくなってしまったライターの話|『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』のボツになった話

そのほか

精神病院

なんとかトイレに行くと、異臭がした。
見ると、大便器のところにウンチまみれの男性が倒れていた。もちろん彼を見ても、俺は何も感じなかった。

 

ふと横を見ると、櫛を片手に持った70歳くらいの男性が立っていた。櫛には髪の毛が大量についていた。それを俺に見せようとしてくる。

 

俺はわけがわからず首をひねると、その男は笑顔のまま俺の首を締めてきた。
さすがに息ができなくなって振りほどこうとすると、ダダダダッと男性の看護師が駆けつけてその男を組み伏せた。
そして笑顔で、
「大丈夫でしたか?」
と聞いた。

 

ベッドに戻る途中、若い女性の看護師が歩いていた。その後には老人が4人
「まんこ!! まんこ!! まんこの臭いがするぞ!!」
などと卑猥な言葉を叫びながら、ついて歩いていた。

 

看護師はもう慣れてしまっているようで、顔色変えずにさきほど俺を助けてくれた男性の看護師とやり取りをしていた。

 

それを見て、老人たちは怒り
「やってるのか? お前ら!! セックス!! セックス!!」
と怒鳴った。

 

ふと閉じられたドアの窓を見ると、部屋の中では何人もの人がベッドに縛られていた。相変わらず女性器の名前を叫ぶ老人を見て、でもこうやって外を歩いている人達はまだマシな方なんだ、と思った。

 

俺がベッドに戻ると、隣のベッドの60歳くらいの男性が、
「俺は家族にはめられたんだよ!! 家族にだまされてここに入れられたんだよ!! もう出られないんだよ!!」
と俺に訴えてきた。

 

俺にはその男性が狂っているのか、狂っていることにされているのかは、判断できなかった。
そのうち、中年の女性看護師がやってきて、その男性を諌めた。そして俺に、
「この病院には20年、30年いる人がざらだからね。ここはそういう所。あなたも、とりあえずは何もかも忘れて眠りなさい」
と言われた。

 

1日4回、ベゲタミンという強力な薬を投薬された。飲む拘束衣と言われるくらい強烈な催眠鎮静作用がある薬だ。危険性も高く2016年には販売が中止された。

 

とにかく薬を飲んでしまうと、何もできなくなる。

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