片づけや掃除ができないことで、どのように生活に支障がでるのか・どのようにできないのかを、ADHD当事者の一人で専業主婦・3人の子どもの母・40代後半の林さん(仮名)に聞いてみた。
林さんは、出かけるときはオシャレをして、派手な服装を好み、車の運転が上手な女性である。子どもの習い事のお迎えや、得意な料理の研究など、充実した毎日を送っていた。だが、夫から、部屋の中が汚いと毎晩怒られていた。部屋の中は、常に服や雑貨・子どもの学習道具などが散乱している状態だった。食器を片づけるのを忘れて、テーブルの上に置いたままにしてしまったり、典型的な「汚部屋」状態だ。
スーパーマーケットの袋も、部屋のいたるとこにあるため、その日買ってきた食材を、部屋のどこに置いたのか分からなくなってしまう。深夜に夫が帰ってきたら、夫に探してもらうこともあったという。
中には、要冷蔵の食品があり、腐らせることもあった。困るのは、小学校に提出する書類やプリントの類がなくなってしまうことや、保険証など重要な種類も必要なときに見つけられないことだった。
片づけができない自分は「ダメな人間」だと落ち込み、受診した精神科で、発達障害の検査を受けたところ、ADHDであることが分かった。
家が「汚部屋」状態でだと、子どもの友だちが遊びに来ても、家にあげられない。「ウッカリ物忘れ」が頻繁に起きる。子どもたちから心配されてしまい、母親としてダメなのかもしれないと自己評価が下がり、落ち込んでしまう。益々、片づけができなくなってしまっていた。
ADHDの不注意や衝動性の症状を穏やかにする「ストラテラ」を服用している。服用すると頭がスッキリと冴えて、家事の段取りが見えてきたり、不注意が軽減さえるなど、調子が良かった。だが、長期服用すると、少しずつ効果が薄まっているように感じるという。
片づけや掃除をやりたいと思っていても、体が動かない状態になると、自分だけで行うのは難しい。しかし、放置したままでいると、人体によろしくない。
長年積み重なった埃は、時間が経過すると、煤埃(すすほこり)のような黒い小さな粒となり、舞いやすくなる。細かい黒い粒は、服の繊維の間などにも入り込んでいく。古い書物のような、独特のニオイも出てくる。部屋の中の物には、ニオイが染みつき、香水や防臭スプレーでも隠せない。
すれ違うときに、この独特なニオイがすると、すぐに分かる。どんなにお洒落をしていても、このニオイがするだけで、自宅は「汚部屋」であると、バレてしまう。
煤埃(すすほこり)のある家のニオイがする人は、顔に吹き出物が多い場合もある。多分、寝具のカバーなども、交換・洗濯をしていないのだろう。煤埃(すすほこり)は、ニキビや吹き出物の原因にもなるため、枕にはタオルをかけて眠り、3日に一度、(毎日しても良い)の頻度でマメにタオルを交換すると改善されていく。