共感覚者の彼女の人生~多数派とは異なるユニークで厄介な認知・記憶様式~

障害者ルポ

【独特な認知・記憶様式】

「小学校で塾に通いだしてからは、勉強が楽しくて

勉強ばっかりしていました。

なので、中学生になる頃には、成績は都で一番を取る科目もありました」

 

そんな彼女は自身の記憶のシステムを独特だという。

塾以外で、学校の授業にはギリギリの出席日数しか受けておらず

休んだ日はひたすら一人で教科書を暗記していたという。

暗記が苦にならず、教科書一冊を丸々覚えることができ

写真のように「図」としてとらえていた。

 

「脳にはパソコンと同じく、容量がありますよね?

恐らくその容量がオーバーするので、学校の授業は聞いていませんでした。

極端な視覚優位だったからだと思いますが

教科書を写真のように覚えていました」

しかし、脳の容量は有限なので、受験前に2週間ほどで教科書を丸暗記すると

受験後にはその内容を全て忘れてしまったという。

 

暗記科目は大の得意で、数学など、公式のみ暗記でき

受験会場で解かなくてはならない科目は「間違える可能性があるから」と選択しなかった。

それほど、自分の記憶力に絶対の自信があった。

 

「高校受験の後に、忘れすぎて、九九や足し算、引き算ができなくなったんです。

その時に、自分は何かおかしいと思いました。何か人と違うんだって」

 

それは驚いたに違いない。

そこまできれいさっぱりと忘れるものだろうか。

彼女の話を聞いて、サヴァン症候群の人たちの認知・記憶様式と似たものを感じた。

サヴァン症候群とは、精神障害や知的障害を持ちながら

ごく特定の分野に突出した能力を発揮する人や症状を言い

自閉症の人に多くみられる。

 

サヴァン症候群の人は、ある一定の容量のものを記憶すると

キャパシティがオーバーする記憶を、取捨選択することなく

一切忘れてしまうという。
しかし、彼女自身はサヴァン症候群を疑ったことはなく、医師に受診したことはない。

 

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