日本のホームレスはなぜ路上で『ものごい』をしないのか? 実際に路上でものごいをして分かった事は?

コラム日本語

そんななんともつらい気持ちで座り、しばらくすると道行くサラリーマンやOLが、小銭をチャリンチャリンと空き缶の中に入れてくれた。たった、6時間座っただけで3000円以上の収入を得ることができた。
時給500円は安いかと思うかもしれないが、ホームレスが最も従事しているアルミ製の空き缶回収の場合、1キログラムの缶の買取り価格が約100円だ。1時間で5キログラムの空き缶はまず集めることができない。歩き続けて、汚いゴミ箱に手を突っ込んで、空き缶を集めるのに比べて、精神的にプレッシャーがあるものの座っているだけのものごいはずいぶん身体的には楽だ。

 

ものごいをしている途中に、「パン屋でバイトしてるんですけど、売れ残りのパンで良かったら」と大きいパンをもらったこともあった。また、ニコニコ笑った笑顔の老婆が話しかけてきて「若い身空でこういう生活になってしまったのはかわいそうね。私が入っている団体に入れば、しばらくは衣食住には困らないわよ」と、有名な新興宗教団体への入信を勧められた。その新興宗教団体が、ホームレスに対しどのようなほどこしをするのかは知らないが、本当にホームレスでなくなることができるなら悪くない話かもしれない。
それならばと、その新興宗教団体の本拠地がある町でものごいをしたら、すごいスピードで注意され、通報されたのでほうほうの体で逃げ帰った。まあそんなものである。ものごいをしていると、「ここは自動車が通るので移動してください」などとたびたび警備員や駅員の人に注意、指示され、移動を強要された。ただあまり厳しい言い方ではなかった。申し訳ないんですが、という雰囲気だった。

 

少数ではあるが、現在も駅前などでものごいをしているホームレスはいる。新宿駅や渋谷駅の近辺には常に数人のホームレスがものごいをしているのを見かけたことがある。目の前に、どんぶりや帽子、空き缶を置いて座っている。
「右や左の旦那様~」
などと口上を垂れている人はいない。ただただひたすら土下座をしている人がいたが、まだ積極的な方だと思う。話を聞くと、「あまりに積極的にものごいをすると、警察に注意されるからね」と言われた。警察もわざわざ注意しなくても、と思うかもしれないが根拠はある。ものごいをする行為は軽犯罪法に抵触するのだ。

 

『軽犯罪法 第一条 二十二 こじきをし、又はこじきをさせた者』

と決められている。ものごい(こじこ行為)は犯罪なのである。違法行為ならば、警察が注意するのは仕方がないところではある。

ただ軽犯罪法には、ホームレスには厳しいものが他にもある。

『軽犯罪法 第一条 四 生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの』

というものもある。ホームレスの多くは、廃品回収業をしているが、ものごいをして生計を立てていた場合は職業とは認められないだろう。ホームレスという言葉は家がないという意味だから、住居がないのは大前提だ。

『軽犯罪法 第一条 二十六 街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者』

というものもある。立ち小便をする行為は犯罪だ。野外で生活しているホームレスは、抵触してしまう可能性が高いだろう。軽犯罪法の罰則は『1日以上30日未満の身柄拘束』または『1000円以上1万円未満の金銭徴収』であり、ほとんどは注意されただけで終わる場合が多い。とはいえ、「犯罪行為である」というのは大きい。海外の法律には詳しくないが、日本でものごいをする人が少ない理由の一つには、「その行為が犯罪だから」というのがあるのだと思う。

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