竹書房から
『誰もが見て見ぬふりをする禁忌(タブー)への潜入で見た誰かにとっての不都合な現実』
という、めちゃくちゃ長いタイトルのコミックエッセイを上梓した。
タイトル通り、僕が様々な場所に潜入取材をした際のエピソードを紹介した内容だ。
カルト宗教、閉鎖病棟、自己啓発セミナー……などなど様々な場所に潜入している。連載は現在も続いていて、今はマルチビジネスに潜入した時のエピソードを描いている。
潜入ルポを書いていると、よく
「どうやって潜入したんですか?」
と聞かれる。
実は、あまり凝った潜入の仕方をしたことはない。
宇宙人を信じる大きいカルト宗教団体に潜入する時は、教団が主催しているフリーの講義に何度か出席した。
出席しているうちに、教団職員と顔見知りになり、
「会員になったらいいよ。夏に大きな合宿があるからそれに参加したらいいよ」
と向こうから勧めてくれた。
大事件を起こしたカルト宗教の後継団体に潜入した時は、直接道場に行ってドアのチャイムを押した。
「信者になりたいんですけど……」
と素直に伝えると、中に入れてくれて話を聞いてくれた。しばらく悩みごとを相談していると、
「だったらじゃあ、うちに入っちゃう? 修行したらあっという間にそんな悩みふっとんじゃうよ!!」
と言われて、無事潜入することができた。
と、上手くいった場合もあるが、なかなか苦労したケースもある。
自己啓発セミナーやマルチビジネスは、そもそも
「入りたくない人を、説き伏せて入らせる」
というのを前提としている。
そもそも、この時点でだいぶ変である。
マルチビジネスの人は良く
「本当に商品は良いから!! それはマジだから!!」
と強調する。
そもそも本当に良いものなら、普通に売っていれば商売になると思う。
トヨタや資生堂やヤマザキパンなどは、間違ってもマルチビジネス的な販売方法はとらないだろう。
話が逸れたが、自己啓発セミナーやマルチビジネスに潜入する時にも、特に工夫はせずにまっすぐにぶつかっていった。
会社に電話して、
「セミナーに参加したいんですけど」
「マルチビジネスをやってみたいんですけど」
と伝えた。
しかし『説き伏せて入れさせる』のには慣れていても、『入りたい』と客が来ることは全くなかったらしい。
どちらも、とても待たされたあげく『特別枠』のような形で潜入することになった。内部ではだいぶ混乱したようだ。
なるべく、自然な形で潜入したかった僕としてはやや不本意ではあったがなんとか潜入することができた。