参加していた女性に話を聞くと「宇宙人を信じる」という部分はあまり真剣には考えていない人が多かった。否定はしないけど、特に重要視はしていない。
ある女性が大事にしているのは教団の「性に寛容」な部分だった。なぜなら彼女は同性愛者であり、そのことで今まで非常につらい思いをしてきたからだ。
「性に寛容な教義」は彼女にとって、希望であり、救いだったのだ。性的なものだけではなく、親子関係などで悩んでいる人も多く参加していた。実際、会期中に開催されるセミナーで語られる話の多くは人間関係についてであり、宇宙人や宇宙船についてはあまり取り沙汰されなかった。
ただ、教団の「疑似科学的世界観」に救いを求めて入信している人もいた。
雑魚部屋には多くのUFOオタクのおじさんたちがいて、性行為には興味がなく、延々と葉巻型がどうだの、ミステリーサークルがどうだの、と話をしていた。中には、教祖が言った宇宙船の説明は信じず、自分が見たUFOの話をべらべらと話続ける人もいた。そういう人たちにとっては、新興宗教というよりUFO同好会みたいなノリだったのかもしれない。
それよりもっと切実に希望を求めて入信している人がいた。それは障害者の人たちだ。
新人の教徒の世話をしていた優しい男性は、教団内ではまずまず高い地位にいたのだが、ダンス
パーティーなどのイベントには参加しなかった。話を聞くと、
「僕は生まれつき心臓が悪いんだ。だから激しい運動はできない」
と言われた。思わず、言葉に詰まっていると彼は
「いや、大丈夫だよ。だからこの教団に入ったんだから。ナノマシン技術やクローン技術で永久に生きることができるからね。だから、永遠によろしくね」
と言った。永遠によろしく、という言葉に背筋がゾクッとした。