ふと横を見ると、土の入ったプラケースが並んでいる。どうやら畑のようだ。
「ちょっと前までは菜種を植えてた。菜の花も食えるからな。今はゴーヤとか色々と。俺じゃなくてお客さんがやりたがるのよ。マンションのベランダのプランターじゃ植物育ててもつまらんやろ。俺は大地主やからな。国交省には睨まれとるけど」
と言って笑った。
国土交通省の職員はたびたび訪れて、話をしていくそうだ。
「出て行けとは言えんわけよ。基本的人権があるからな。『撤去してください』って書いていったりするな。
『大阪は福祉の街だから、福祉をもらってください』
って言われるんやけどな、福祉もらうヤツは、みんな早う死んでしまうわ」
こういう文脈で出てくる福祉はつまり生活保護の意味である。
生活保護をもらって死んでしまうというのは、ちょっと解せない。
「福祉もらうヤツは、酒のんでギャンブルばっかりしよるわ。西成行ったことあるか? 西成は炊き出しやっとんだけどな。それに並ぶ半分以上が生活保護もらっとるヤツらや。ようするにギャンブルで全部お金使ってしもうてやな、しかたないから炊き出しに並ぶんや。なんのための生活保護か、なんのための炊き出しかわからんやん。生活保護もらって動かなくなってしまったヤツはそういう風になってしまうんよ」
と語った。
かなり偏った見方ではあるものの、全くのでたらめではない。実際にそういう人たちをたくさん見てきたのだろう。
お爺さんは、ぬくぬくと眠る太った犬の方を見る。視線を感じた犬はお爺さんを見返した。
「お前も食ってばっかりだと死ぬぞ。まあ、お前は他の人から、食べ物もらうから手間かからないけどな。いつもだいたい2~3人が来てくれて餌をくれるんよ」

お爺さんは生活保護はもらわずに、“お客さん”にシジミを売ったり何なりして稼いでいるそうだ。
実際に、お爺さんは今の生活が、生活保護をもらってアパートで生活するよりも良いと思っているのだからそれで構わないのではあるだろう。

