HSPで人一倍傷つきやすかった彼女が『好きを仕事に』|歌と紅茶で幸せを届ける紅茶屋さん

インタビュー

自分の愚かさに気づき

歌う紅茶屋さんまりのんとしてリスタート

 

「CDを出すまでは死ぬ気でがんばりました。自分が夢見た音楽の世界でCDが出せて、TVで流れたりするのはとても嬉しかった。それなりに周りに認められたとも思うけれど……。ちょっとした虚しさを感じるようになりました。

 

認められたという気持ちの愚かさに気がついたからです。とんだ独りよがりな感情で、醜いなって。誰に向かってどんなことを伝えてどうなってほしいのか、信念がなかった。

そしてなによりも、好き嫌いの基準ではなく他人目線で自分を作り上げていて、自分が素直に楽しめていないことに気づきました。自分が1番自分を愛せていなかったんです」

 

自分の好きな物で人にハッピーな気持ちになってもらうこと、それが自分の幸せ。そしてそんな自分が1番愛せる自分である。それに気がついた彼女は、自身が大好きな歌と紅茶で幸せを届けることを思いつく。

 

そこで本格的に紅茶の勉強を始めることに。世界のお茶専門店ルピシアで修行を積んだ後、(株)ポット・マジョラムを設立。カフェインレス紅茶専門店『紅茶の国のアリス』を立ち上げた。

 

さらには、“歌う紅茶屋さん”としてセルフプロデュース。紅茶の楽曲を初め、ミュージカルのように楽しめる『ミュージカルポップス』と名付けたジャンルの歌を多数リリース。「気がついたら頭からティーカップが生えてきました(笑)」

まりのんさんのお仕事への想いが込められたキュートな楽曲「わたしは紅茶屋さん」

 

人の役に立つ仕事がしたい。紅茶セラピーでハッピーに

まりのん②

毎年横浜赤レンガ倉庫にて開催される「ストロベリーフェスティバル」。限定で発売される「横濱ストロベリーティーシリーズ」は、例年完売する人気商品だ

 

アリスの可愛らしいパッケージが目を引く『紅茶の国のアリス』は、発売以来、女性を中心に人気を博す。Amazonや楽天市場のギフト部門で上位を獲得する他、メディアでも取り上げられるようになった。

 

起業前にしっかりとした知識を身につけたことが功を奏し、幸先の良いスタートを切ったまりのんさん。紅茶屋として起業したことにより、プライベートにも変化があったのだそう。

 

「紅茶の仕事を始めてから、父との関係が少しずつ変化しました。それまで、仕事人間だった父とは、共通の話題が殆どありませんでした。けれど、ビジネスパーソンとしては大先輩です。具体的なアドバイスをしてくれたり、イベントのサポートをしてくれたり。ビジネスを通して徐々に会話が増えていきました。今では、イベントでの搬入や設営は父の担当です」

 

口下手な父と、うまく甘えることができなかった娘。いつもどこかで距離を感じていた父との関係を”ビジネス”は取り持ってくれた。

 

現在、まりのんさんにとって父親は、仕事上でも最も頼れる存在で、ある時、父の言った「人の役に立つことじゃなきゃ仕事じゃねぇ」の言葉が、彼女をさらに突き動かすことに。

 

「刺さりましたね。果たして今、私は人の役に立つ仕事ができているのか……」この言葉を受け、まりのんさんはショーや舞台だけでなく、もっと日常に寄り添った具体的に人の役に立つ何かをしたいと考えるようになる。そこで、彼女はマインドフルネスと心理学を学び、アンガーコントロールスペシャリストの資格を取得した。

 

マインドフルネスとは、GoogleやAppleなどの大企業も取り入れていることで知られる、集中力やアイデア力をアップさせることに使われる、宗教的な要素を取り除いた瞑想の方法のこと。アンガーコントロールは、怒りや悲しみなどの自分の負の感情を受け入れ、それに伴う行動を上手にコントロールして負の感情とうまく付き合っていく方法だ。

まりのん

「人は無意識に、今現在のことだけでなく、過去や未来のことを考えてしまうそうです。未来への不安や過去の嫌なことを思い出してしまう。それを過剰に繰り返すと、ストレスとなり脳の動きを悪くして集中力が散漫になったり、記憶力が衰えたり、感情コントロールが難しくなったり、鬱やストレスに繋がる。

 

マインドフルネスは、端的にいうと”今この時にひとつのことに集中する脳トレ”です。

 

やり方としては、呼吸に意識を集中させて、今に意識を向けるように息を吸ったり吐いたりして瞑想するという簡単なものです。ですが、いざ集中して瞑想を毎日続けるのは、簡単なようでいて意外に難しい。

 

それで、食べることに集中したり、キャンドルの炎を見つめたりという方法を取り入れている方もいて。『マインドフルネスと紅茶は相性がいいのでは?』と思いました」

 

紅茶は、みんなが飲んだことがある身近で日常的なもの。紅茶の味や香りに集中して飲むことでマインドフルネスを実践したら、毎日続けることができるのではないかと考えたまりのんさん。ここでもしっかりと知識を身につけたうえで、自身のYouTubeチャンネルにて、マインドフルネスやアンガーコントロールを盛り込んだ紅茶の飲み方の動画配信を始める。紅茶のリラックス効果を、より高める飲み方の提案をする『紅茶セラピー』の講座も好評だ。

アレンジティーの作り方や紅茶の豆知識も学べる「紅茶姫&紅茶王子 育成チャンネル」

 

「私、感情の浮き沈みが激しくて。恐らく、HSS型のHSPの気質があると思うんです。どちらかというと外交的ではあるけれど、色々なことに敏感で、ちょっとしたことですぐに落ち込んでしまう。

 

そんな自分を『私はダメな人間だ、弱い人間だ』と責めることもありました。でも、今では『そんな自分も可愛いよ』って受け入れることで楽になりました。

 

同じように悩んでいる方って結構いると思うんです。紅茶瞑想やアンガーコントロールを取り入れた紅茶セラピーで、自分を愛せる心を育んで、紅茶を楽しんでいただけたら私はとても幸せです」

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