愛を乞う人 ~摂食障害で性依存の彼女の孤独~

障害者ルポコラム

【結婚後も続く性依存】

 

27歳の時、今の夫と職場で出会う。夫は医療関係者だ。

 

「名家のお坊ちゃんだというところと、収入のいい職に就いてるところが気に入りました。愛情はありません」

 

彼女にとって、夫は母に対して恥ずかしくない男、妹に対して、自慢できる男でなければならなかった。

 

妹への対抗意識は、結婚を機に嘘のように消えていった。

サラリーマンと結婚した妹に人生で初めて勝ったと思ったのだ。

 

結婚して間もなく、彼女は1児の女の子に恵まれた。
しかし、娘は知的障害を持って産まれた。

 

「今まで自分を痛めつけてきた罰が下ったと思いました。自分を責めました。何よりも、母にまた見放される、がっかりされるというのが怖かった」

 

障害児の育児は想像以上に大変だ。
全てが彼女の抱いていた育児と勝手が違った。

 

定期的にやってくる母は、決して彼女を認めてくれない。育児に関することを逐一、ダメだしされるのだ。「お前がしっかりしないから」「お前がだらしないから」と彼女の育児を「指導」していく母はまるでプライベートでも教師のままだ。

 

「子供はかわいいです。障害を持っていてもかわいい我が子に代わりはない」
子供を産んだ頃から、自分はいわゆる毒母の下に育ったのだと思った。

 

しかし、頭では分かっていても、彼女は「愛もどき」を感じられるセックスに依存し続けている。

刹那の愛を求めて、不倫を繰り返す。ネットを介して知り合う男性だ。

 

危険な目にあったこともある。

「2年間、不倫した相手に、ナイフを突きつけられ、一緒に死のうと言われたときは、やっと楽になれると思いました」

 

家庭では完璧なお母さん、職場では、熱心な母子支援員。その完璧主義が彼女の心を追い詰め続ける。夫は全く気付いてる様子がない。本心では気づいてくれることを望んでいるのか。彼女はいつまで自分を罰し続けるのか。母の呪縛から逃れられる日は来るのだろうか。

 

そんなことを思いながら、取材を終えた。

 

※内容は事実関係に基づいていますが、個人特定を避けるため、人名・地名・関係者名などは一部事実と異なります。

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