宇宙人を神と信仰する新興宗教団体に潜入取材。永遠に生きられるという“希望”が持つ危うさとは?

そのほか

理知的な彼がどこまで本気で信じていたかはわからないが、少なくとも教団が提供する“希望”にすがっていた。

 

彼だけではなかった。脳性小児麻痺の車椅子の青年などが、会場にいて熱心に講義を聞き入っていた。

「宇宙船で蘇った際には、五体満足完全な身体になる」

「このまま技術が進めば、数年内に身体を完全に健常者にすることができる」

というような話に目を輝かせているのを見た。そして同行した家族も、心から信じているかはわからないが、少なくとも表面上は同意していた。その姿を見て、どうにも複雑な気持ちになった。
なぜなら、彼らが食いついている希望がニセモノだからだ。
この宗教を信じたからって、彼らの障害は治ることはないし、彼らが宇宙船で蘇ることもない。そもそも彼らが崇拝する、宇宙人などいない。
宗教の話をする時に

「たとえどんな教えであっても、人を救ったならば正しい宗教だ」

と言う人がいる。宗教の本なんかを読んでいると
「それでも宗教は素晴らしいんですよ」
「人を癒やす宗教は正しいことなんですよ」
と言う趣旨のことを語るために多くのページが割かれている。それはまあ、一つの真理ではあるのだろう。ただ筆者は、まがい物の希望をエサにして信者を釣っている様子を見ていてすこぶる気分が悪かった。とてもじゃないが

「それでも救われてるからいいんですよ」

とは思えなかった。問題になるほど金銭や財産を巻き上げられてはなくとも、そこにそれなりの救いがあったとしても、やはりそれは詐欺的な行為に見えた。

飽くまで個人的にではあるが、まがいものの希望にすがって生きるくらいなら、正しく絶望して死んだほうがマシだ、と思う。

 

 

 

 

 

 

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