支援者である成瀬さんに話をうかがった。
「出会って5~6年ですが、たぶん薬を途中でやめていた時期もあるでしょうね。
自由奔放な方なので、再発しながらも穏やかに暮らしています」
成瀬さんの法人には、障害者向けグループホームもある。しかし、奔放な佐藤さんは束縛される感じがするのか、集団で暮らすことを嫌う。ショートステイでまずは慣れてもらい、将来的にはグループホームで暮らす計画を立てている。
「本人のつらさは、病気の症状自体ではないようですね。
世の中のものさしで生きていけない。
車に乗りたいのに乗れないなど、物理的な面での不自由を感じているだけのようです」
そう語る成瀬さんの顔は非常に優しい。
「佐藤さんは、世間のものさしでいうと障害とされています。
福祉サービスや制度を利用するために調整はいりますが、本人はハッピーなんですよね」
という言葉が印象的だった。

筆者は取材の前はつらい、苦しいという話になるのかと身構えた。そして、福祉の力でなんとか「健常者といわれる人たち」と同じような暮らしをすることが、佐藤さんやその他の統合失調症の方にとり幸せだと思っていた。だけど、佐藤さんを見ていると、半分くらいは妄想や幻覚の中にいるようだが、いたって幸せそうなのだ。生活保護を受給すれば、生活に困ることもない。
B型事業所の内職で、月1万弱の収入を得る。そして、昔はバカにしていた内職も最近では楽しくなった。休みの日には、名古屋市にある覚王山日泰寺(かくおうざん にったいじ)にお参りに行く。お金に余裕があれば、高野山に献金もする。

