聞こえているのに聞き取れない?|APD(聴覚情報処理障害)の YouTuber笑歩さんに聞いてみた

障害者ルポインタビュー

笑歩さんも、なみしさんも職場で支障が出たことにより、自身の聞き取り困難を自覚する。

 

笑歩さんは耳鼻科で検査を受けるも聴覚には異常がなく、明確な診断がつくことはなかった。しかし違和感が拭えず、インターネットで検索してみたところAPDにいきつく。そして、APDの見識のある病院へ。なみしさんもインターネットでAPDの情報を得たうえで病院を受診した。

 

その後、笑歩さんはAPDであること以外にも、当時の仕事を自分には合わないと感じYouTuberに転身。なみしさんも事務職は退職。当時から携わっていたライブハウスの運営とアーティスト・マネージャー業に力を注ぐことに。

 

笑歩「福祉施設で働いていたのですが、早番・日勤とバラつきのある勤務形態が私には合いませんでした。ASDの特性的なものもあるのかもしれません。生活のリズムが乱れるのがキツくて、夫に当たることが増えました。これはダメだなと思い退職することを決めました」

 

退職後、すぐにYouTubeでの発信を始めたという笑歩さんに、なぜ、YouTuberという道を選んだのか尋ねてみる。

 

笑歩「APDはまだまだ認知度の低い障害です。私と同じようにこの障害で困りごとを抱えている人が多くいるかもしれない。ならば、そうした人たちに届くように情報を発信していきたいと思いました」

 

元々モデルとして映像の世界にいたこともあり、YouTubeを主な発信源にすることに。

 

笑歩「リアルタイムでドラマを見ていると、聞き取れなくても話は進んでしまいます。でも、YouTubeなら話す速度を変えたり、聞き逃したら戻すこともできる。YouTubeはAPDと相性の良いコンテンツだと思います」

笑歩さん、みなしさん

サインパフォーマーということもあってか、なみしさんはとにかく身振り手振りが大きい。
やはり聞こえづらいため、手話を覚えたのだろうか?

なみし「子どもの頃は、自分に聞き取り困難があるとは気づいていなかったので。聞こえづらいから手話を覚えたというわけではありません。でも、APDであることが判明してから知り合った方には『APDだから手話を勉強しの?』と聞かれることは多いですね。

手話を学び始めたのは9歳の頃です。うちは父がミュージシャンというのもあって。興味を持ったことは、なんでも経験させてもらえる恵まれた環境でした。週6で習い事をして、それこそ、ピアノとか水泳とか習い事の定番は全て網羅したと思います。

手話を始めたきっかけは、聞こえない人と喋りたいというのもありましたが、『ひとつは誰もやっていないことをやってみたら?』と両親に言われて。それなら手話を覚えたいと思い、本やTVを見て独学で勉強しました」

APDマーク

誰でも自由に利用することができる聴覚情報処理障害(APD)マーク

お二人に共通するのは、APDという症状を知らなかったため、症状に気づけなかったこと。症状について自力で調べて診断に至ったこと。APDは非常に認知度が低く、聴覚検査でも異常が出ないため、見過ごされることが少なくはないそうだ。しかも、未だ治療法が確立されておらず、障害が判明しても改善へと繋がる治療が受けられるわけでもない。

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