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  • ADHDの遅刻にすっぽかし、うっかりミスにブチ切れ寸前! ~ムカつかない方法5選~

    ADHDの遅刻にすっぽかし、うっかりミスにブチ切れ寸前! ~ムカつかない方法5選~

    今この記事を読んでいるあなたの周囲にも、ADHD(注意欠陥/多動性障害)で約束の時間をすっぽかしたり、遅刻をしたり、うっかりミスを連発する人がいるのではないか。そんなADHDの人とムカつかずに付き合える方法を5選をご紹介する。

     

    そもそも、発達障害とASDとADHD(注意欠陥/多動性障害)ってどう違うんだと思っている方はこちらの記事も合わせて読んでいただきたい。

     

    まず、ADHD(注意欠陥/多動性障害)のすっぽかしやうっかりミスは、努力でどうにか防げると思っている方へ。ADHD(注意欠陥/多動性障害)はその名の通り、不注意だったり、衝動性からよく考えずに行動してしまったり、じっとしているのが苦手という特性を持つ「障害」だ。努力でどうにかなるのなら、「障害」と言われないので、本人の努力でどうにかなる、気合いの問題だととらえるのはやめよう。

     

    もしADHD(注意欠陥/多動性障害)の人がライフハックでどうにかしているのであれば、その人は軽度もしくはすでに充分、頑張っている状態だ。人間だれしも疲れているときには、普段している努力すらできなくなる。頑張り続けた状態の人がそれでもミスしてしまった場合、責めるのは得策ではない。むしろ、普段は無理をして頑張っているということなのだ。

     

    ADHD(注意欠陥/多動性障害)のすっぽかしを現した当事者の言葉で分かりやすかったのが「出かける準備をして玄関に行こうとしたら、キッチンでさやいんげんを発見した。気になったので、筋を取ることに熱中してしまった。約束の時間は過ぎていて、相手から怒りの電話がきた」というもの。

     

    興味がないことには集中力がないのはもちろんのこと、興味があって行く気もあるのに他のことに注意が移ればそのことに没頭してしまう。それもADHD(注意欠陥/多動性障害)の特性だ。

     

    では、ムカつかない方法を具体的に書く。

     

    1、遅刻やすっぽかしをされても許せる場所で待ち合わせをする

    私が最悪、遅刻どころかすっぽかされてもムカつかないのは電車に乗らずに帰ってこられる場所だ。例えば、最寄り駅や自宅前。がっかりはするが、許せる範囲は徒歩で歩いて帰ってこられる場所だ。2駅までなら許せる、車で行ける場所なら許せるなど人によってその基準は異なる。なので、自分なりの「許せる」待ち合わせ場所を指定する。

  • ボビー・オロゴン DVで逮捕を受けて ~身体的な暴力だけじゃない。DV地獄の現場~

    ボビー・オロゴン DVで逮捕を受けて ~身体的な暴力だけじゃない。DV地獄の現場~

    5月16日、ボビー・オロゴン容疑者が、さいたま市浦和区の当時の自宅で、「長年DV被害を受けてきた」としていた妻(47)に「ボコボコにするから」と言って左頬を右手の指先で突く暴行を加えたと報じられている。

    https://www.yomiuri.co.jp/national/20200924-OYT1T50145/

     

    ボビー・オロゴンはナイジェリア系日本人のタレントで、過去にはTBSのバラエティ番組『さんまのSUPERからくりTV』などに出演し、外国人お笑いタレントとして活躍し、一躍有名人となった。が、2006年(平成18年)1月、当時の所属事務所と出演料などをめぐり対立。事務所内で暴れ、その場に居合わせた鈴木宗男衆議院議員(当時)の元私設秘書に軽い怪我を負わせる事件を起こし、芸能活動の自粛を余儀なくされる。

     

    実は、私にもDVを受けた過去がある。ただし、ボビー・オロゴンの事件のように、肉体的な暴力ではなかった。DVの恐怖は肉体的な暴力だけではない。

     

    DVは大きく下記、3つに分けられる。

    ・身体的なもの

    ・精神的なもの

    ・性的なもの

     

    ボビー・オロゴン容疑者が、今回行ったとされるのは「左頬を右手の指先で突く」という身体的な暴力と「ボコボコにするから」と言う精神的なものだ。

     

    私が経験したのは、主に精神的なものである。27歳のとき、インターネットの掲示板を通じ知り合った元夫は一級建築士の資格を持ち、27歳で年収600万。今でいうハイスペックな男だった。

     

    交際して6か月。建築会社で管理者として手腕を振るい、将来性のあった元夫は私の両親の信頼をすぐに得た。そして、半年の交際後入籍した。都内の一流ホテルで豪華な挙式もあげた。当然、私は幸せな夫婦生活がはじまると思っていた。

     

    だが、元夫は結婚生活が始まると豹変したのだ。私は当時、公開企業の経営企画室に勤務し、キャリアを積んでいた。

     

    「俺のことだけが好きなら、他の男の連絡先なんていらないよね。消しちゃうよ」と言われたのは、一緒に暮らし出してから1か月目。言われたときは、意味が分からなかった。唖然とした私から携帯電話を取り上げ夫は言葉通り、私の携帯電話から男性の連絡先を消していった。もちろん仕事関係者の連絡先だって入っている携帯電話の連絡先だ。

  • 発達障害者の人付き合いのヒント ~「白黒思考」「二極思考」からの抜け方。男女間なら距離感が分からずにトラブルにつながることも~

    発達障害者の人付き合いのヒント ~「白黒思考」「二極思考」からの抜け方。男女間なら距離感が分からずにトラブルにつながることも~

    発達障害の方には、物事を0か100かでとらえてしまう二極思考・白黒思考と呼ばれる特性を持つ人が多くいます。

     

    例えば、人間関係ならすごく好きか、嫌いかしかなく普通がない。子どもだとゲームや競争で負けると、パニックになって泣く子もいるし、自分はダメな子だとひどく落ち込んで自己肯定感が落ちてしまったり。大人になるとその自己肯定感の低さが二次障害(発達障害そのものではなく、うつ、不安障害、強迫神経症などの精神疾患を発症すること)となってしまう人も。

     

    発達障害グレーゾーンの私は、気づくまでの30年超は人付き合いを極端に分けていました。「付き合える」「付き合えない」のどちらかしかなく、一回友人になっても、嫌いなところが目に付いてしまうと「絶縁する」など極端な行動に出てしまう。白黒はあってもグレーはない。この図のような感じでした。

     

     

    この「白黒思考」「二極思考」で人間関係をとらえていた時は、白の部分の「付き合える(親しくしたい)」人たちのことはとことん信じ疑いもしない。理想化してしまう。その分、自分が勝手に理想化した相手に「裏切られた」と感じたらものすごくダメージを受けていました。その都度、抑うつや不眠になることがあって、精神科に受診もしました。今、考えると二次障害なのですが、発達障害という概念が出てくるまでは情緒不安定な自分を持て余していました。

  • スマフォのソーシャルゲームでの『ガチャ依存症』の恐怖を、当事者女性が赤裸々告白。~億単位でつぎ込む人も。電波があればガチャを回し続けてしまう無間地獄~

    スマフォのソーシャルゲームでの『ガチャ依存症』の恐怖を、当事者女性が赤裸々告白。~億単位でつぎ込む人も。電波があればガチャを回し続けてしまう無間地獄~

    スマートフォン向けのソーシャルゲームでは、「ガチャ」という有料くじがある。ゲーム内で使用するカードを、有料のくじで当てるシステムである。たびたび社会問題になっており、2016年には業界団体「日本オンラインゲーム協会」が『課金上限額を5万円』『当たりの確率を明示する』などのガイドラインを作った。
    なぜこのようなガイドラインが作られたかと言えば、かなりの額をガチャにつぎ込む人がいたからだ。彼らは『ガチャ中毒』と呼ばれた。

    2016年以前に、ガチャに高額な課金をしていたという女性Aさんにお話を伺った。(話は2016年のガイドライン以前のできごとになります)

     

    彼女がハマっているゲームは、20人でグループを組んで戦うソーシャルゲームだった。良いカードを引くには一回300円のくじを引くしかない。レア(珍しい)なカードを引く確率はたった0.03%だった。しかもただ単にレアなだけで、戦闘では使い物にならないカードもあるから、良いカードを引く確率はもっと低い。より良いカードが出やすいガチャもあったが、1ガチャ1500円、3000円と高額だった。

     

    「ガチャを引いていると、一瞬でお金が溶けていく感じでした。50万円くらいの課金では、全然強いデッキは育てられません。私は2年間で数百万円使いました。でも、これは仲間の中では、かなり安く押さえられた方だと思います」
    ゲーム内でしか使えないカードを揃えるのに数百万円かけるとは、とんでもないことのように思える。ただ、そこのゲームのトッププレイヤーは遥かに超える課金をしていたという。

     

    「ゲームで知り合ってよく飲みに行く男性は総額2000万円ほど課金していました。それでも全然トップには及びません。このゲームで一位の人は推定3億円以上課金していると言われていました」そのプレイヤーは急に登場して、一気にトッププレイヤーに登りつめたという。どう考えてもその急上昇はおかしい。仲間が「いくらくらいゲームにお金を使っているの?」と聞いたら、「新しいカードを一枚手に入れるために、ベンツ1台ぶんくらいかな? 全部で新築の家、3軒ぶんは使ってる」と答えたそうだ。

    一体、どのような人が高額課金をしているのだろうか?「私が知っている人だと、ショップの社長、コンサルタント、美容外科医、看護師……などですかね。やっぱり社長や、個人経営の人が多いです。珍しいところでは、密漁をして稼いでいるって人もいました。福島の被災地に住んでいて、助成金・補助金でガチャをやっているという人も。一癖ある人が多いですね。写真を送って、とメールすると、全身入れ墨の写真を送ってこられたこともありました(笑)。職業ではないですけど、パチンコが好きな人が多いですね」

     

    もちろんものすごいお金持ちが、数億円使ってもなんら問題ない。だが、そこまでお金を持っていないのに、射幸心に煽られてお金をつぎ込んでしまう人がたくさんいるのが問題なのだ。そもそも、良いカードを手に入れ、ゲーム内で強くなることに、なにか意味があるのだろうか?

     

    「ゲーム内で活躍すると他のプレイヤーから、アイドルみたいに扱われるんですよ。ツイッターのフォロワーも増えるし、自分のグッズを作ったらすぐに完売してる子もいました。オフ会をしたら遠方からわざわざ遊びに来てくれたりします。普通に生きてたら、そんな風にちやほやされることってないじゃないですか!! やっぱり気持ちいいんですよね。」オフ会では、男性プレイヤーもモテるという。強いプレイヤーは「お金を持っている」というのが確定しているというのが大きい。

     

    「ゲームやってる男性って、やっぱりちょっとモテないタイプの人も多いんですよ。女性からすると落としやすいですよね。デート相手を探すためにゲームをプレイしてる、って女子もいました」ゲームライフを楽しんでいた彼女だが、さすがにお金を使いすぎているという危機感は感じていた。

     

    「男性がモテるのとは逆に女性は、月何十万円もガチャをしてるって時点で、男性にめちゃくちゃ引かれますよね。彼氏ができても必死に隠していました」一時はゲームをやめようとも思ったが、なかなかやめられなかった。

    そこで『ガチャ中毒』の女子だけで集まって、『ガチャを引かない女子会』を開催したこともあった。

    「最初はカラオケとかで普通に遊んでるんですけど、そのうち段々ガチャが引きたくなってくるんです。それで、耐えられなくなった子が『ちょっとトイレに行ってくる』って外に出て、ガチャを引きまくるんです。結局みんなガチャ引いてました。結局、電波がある場所じゃあダメだってことになって、みんなで電車に乗って電波の届かない場所に旅行しました。でも、今の日本で全く電波が届かない場所ってほとんどなくて、ちょっとでも電波がつながるとガチャをひいてしまうんですよね」

     

    彼女は、楽しそうに話してくれたが、しかし裏腹にかなり深刻なギャンブル依存症だと感じた。ギャンブル依存症はかなり深刻な病気だ。まさに、「やめたくてもやめられない」状態に陥る。ソーシャルゲームに課金し続けた結果、破産にまで追い込まれた人もいる。

    もちろん、自分のお金を何に使おうが自由だ。そもそも月に万円単位でガチャに課金する人は、全体の1%以下だ。適度にガチャを回して、楽しく生活している人もたくさんいるだろう。それに今はガイドラインができて、昔ほど注ぎ込まなくても、目当てのカードを引けるようにもなった。だが、それでも『ガチャ中毒』『ガチャ依存症』で泣く人は今後も出続けると思う。

     

    語弊があることは承知の上で言うが「有料くじがあるゲームには最初から手を出さない」というシンプルで効果的な防止方法がある。最初からやらなければ、依存症にもなりようがない。面白くはないが、絶対の方法だ。

     

    ゲームに課金しようかどうか迷った時は、少しだけ考慮して欲しい。

     

     

  • 元TOKIOの山口達也容疑者、飲酒運転で逮捕。アルコール依存症でホームレスになった人たちもいる。酒で人生を失う人たち(再掲載)

    元TOKIOの山口達也容疑者、飲酒運転で逮捕。アルコール依存症でホームレスになった人たちもいる。酒で人生を失う人たち(再掲載)

    元TOKIOの山口達也メンバーが、酒気帯び運転でバイクを運転し、事故を起こしたとして警視庁に現行犯逮捕された。SNSでは怒りの声や呆れた声が上がっている。もちろん、彼は断罪されるべきだろう。ただ、アルコール依存症は、本人の「やり直したい」という強い気持ちを打ち砕くほど、強烈な病だ。

     

    自業自得、身から出たさび、因果応報と罵るのは簡単だが、アルコール依存症の怖さも改めて思い知っておきたい。誰だって、いつ何らかの依存症になるか分からないのだ。以下は、以前掲載した、酒が原因でホームレスになってしまった人たちのルポだ。

     

     

     

    ホームレスになった理由に、「飲酒・ギャンブル」をあげる人は8・9%(ホームレスの実態に関する全国調査)だ。だが、実際取材をしていると、その数字以上に酒によって野宿生活を余儀なくされている人は多いように思えた。

     

    今回は、僕の20年にわたるホームレス取材の集大成である『ホームレス消滅』(幻冬舎新書)から、今回はホームレスとアルコールについて述べている2箇所の部分を公開したい。

     

     

    ホームレスとアルコール

    また、ホームレスに話を聞いていると、アルコールが原因で体調を崩しているケースが多い。2015年夏、荒川の河川敷で、上半身に刺青が入っている、明らかにカタギではない中年ホームレス(50代)を取材した。彼はお腹の真ん中に傷があった。

     

    「俺はここに引っ越してきてまだ3日だもん。その前は山谷で生活してたんだ。酒の飲みすぎで胃ガンになっちゃってさ。胃を取っちゃったんだよ。こないだ内視鏡を入れたら大丈夫だっていわれたよ。ただ、たまに食道が詰まっちゃうことがあるんだよ。そうなったら、氷水をぐぐぐぐっと飲んで入れて、なんとか通すんだよ。そうすりゃまた食べられるんだ。はっはっは」そんな原始的な方法で大丈夫なのか不安になった。

     

    「ガンになる前は、リサイクルやってたんだよ。テレビ、冷蔵庫、洗濯機を拾ってきて、直してね。けっこう儲かってたんだ。テレビの取材とかも来てたんだよ。雑誌で漫画化されたこともあるんだぜ。でもある日、すげえ気持ち悪くなっちゃってさ。ついでにウンコも真っ黒になっちゃった。こりゃちょっとやべえなって思って病院行ったら、ガンだって。女子医大に行ったら、2週間で治療が済んだからよかったけどなあ。はっはっは」ちっともよくはないと思う。

     

    「ガンになったのが3年前。5年間再発しなかったら、もう大丈夫っていわれてるんだけどね。そもそも俺の家は、ガン家系ではないんだけどな。まあ酒飲みすぎたのもあるかもしれないけど、井戸水飲んでたからさ。ピロリ菌が混ざってて、それでガンになっちゃったんじゃないかともいわれたよ。もうガンになっちゃったから、仕方ないから酒もやめてさ。公園の草むしりの仕事とかで地味に食いつないでるよ。オケラだよ、金も何にもないよ~。苦労も何にもないけどな。はっはっは」

     

    なお、病み上がりで暑い所で生活するのはつらくないかと尋ねると、頭痛がすると言い出した。そして「昨日、ウイスキー1本飲んじゃったから。もう調子悪い」と打ち明ける。酒はやめたといっていたのだが。「酒は基本はやめてる。ちょっと飲んだだけだから大丈夫だよ。細かいこと気にしてたら、ガンになるよ。はっはっは」この中年ホームレスは底抜けに明るかったが、話の内容は、そこそこ深刻だ。ただ、彼のように酒の飲みすぎで体調を崩す人は多い。

     

     

    ホームレスの話を聞いていると、真面目なホームレスから「酔っ払い(のホームレス)はタチが悪いから、接触しないほうがいいよ」といわれることがある。たしかに、ドヤ街や上野公園では酔っ払ったホームレスがたくさんいた。僕は酔っ払ったホームレスにも話しかけたが、やはりみんなやたらとタチが悪かった。山谷であった元自衛官だという50代のホームレスには、昼から夜まで延々と付き合わされた。もうお開きにしたいと思っても、終わらせてくれない。いっていることは堂々巡り。

     

    「写真は、腕で撮るんじゃない!心で撮るんだぞ!」などカメラが趣味だというこの男性に精神論を聞かされて辟易した。とにかくベロンベロンになって騒ぐので、出入り禁止 になっているお店も多かった。酔っ払ってのケンカも多く、顔にアザを作っている人も多い。また、酔っ払うと、体温の調整がうまくいかなくなる。冬場でも布団に入っていると暑いので、そのまま外で寝てしまう。そして、次の日に凍死してしまう人もいた。

     

    個人的には、ホームレスにとって酒は害悪でしかないと思う。ただ、多くのホームレスは「そんなこといったって、飲まなきゃやってられないだろう! 酒飲むしか楽しみがないんだ!どうせもう何年かで死ぬんだ、ほっといてくれ」という。そういわれてしまうと、返す言葉がない。

     

    異様な空気を放っていた「いろは会商店街」

    山谷には「いろは会商店街」という大変長い商店街がある。1970年代の写真を見るとずいぶん賑わっているが、それに比べて2000年頃はシャッターを閉じた店も多かった。周辺ではホームレス同士、花札で賭けをしている姿もよく目についたのだが、話しかけると、「見てんじゃねえ」「あっち行けおら」「どらぁおらぁあ」と恫喝されることも多かった。近くには「マンモス交番」と呼ばれる山谷地区交番(現・日本堤交番)があるのだが、賭け花札は無視しているようだった。

     

    なお、マンモス交番という名前は、マンモスのように大きい交番という意味から来ている。後述する要塞のような西成警察署と比べると小さいが、地上4階建てで建物内に駐車場付きのため、交番レベルの建物ではない。この交番は1959年に、山谷地区の環境を浄化するために建てられた。警視庁のホームページを見ると、「交番では、喧嘩や酔っ払いの保護取扱いが多いです」(2020年4月時点)と書かれてある。以前、この交番ができて間もない頃の写真も見たことがある。当時は、ドヤ街は血気盛んで何かあれば暴動に発展しかねないピリピリした空気があったという。1960年の写真では、警察の周りを労働者たちが取り囲んでいた。1020人のレベルではなく桁が1桁、もしくは2桁違う。吉野通りが人で埋め尽くされるほどだ。こんなにもたくさんの人がいて、こんなにも活動的だったんだ、と驚いた。

     

     

    いろは会商店街はアーケードがあって雨風に当たらずに済むためか、夜には多くのホームレスが布団にくるまって寝ている光景が見られた。商店街の入り口に酒屋とお酒の自動販売機があり、そこで酒を買って飲み、泥酔している人が多かった。カップ酒を飲んだ酔っ払いが床にコップを叩きつけて割るので、そこら中ガラスだらけになっていた。第1章でもホームレスにアルコール依存症の割合が少なくないことに触れているが、ドヤ街にいるホームレスはとくにお酒を飲むことが好きである。そして、飲んで仕事を飛ばしたり、酔っ払ったまま仕事に行ったりした結果、手配師から声がかからなくなったといったように、酒のトラブルが発端となってホームレスになったと明かす人も多い。

     

    なお、いろは会商店街の酒の自動販売機はかなり前に撤去されたし、2018年には商店街全体のアーケードも取り外されてしまった。商店街で寝るホームレスはめっきり減ったが、陽光にさらされたシャッター商店街はなんだか、以前にも増して白々しいような雰囲気になっていた。

    (以上、5月28日刊行『ホームレス消滅』(幻冬舎新書 村田らむ)https://www.amazon.co.jp/dp/4344985931より)

     

  • 元TOKIO山口メンバーが飲酒運転で逮捕 アルコール依存症で身を滅ぼす人たち(再録)

    元TOKIO山口メンバーが飲酒運転で逮捕 アルコール依存症で身を滅ぼす人たち(再録)

    昨今、ストロング系酎ハイの登場で、アルコール依存症に関する記事をよく見かけます。私にとってはとても身近な問題で、自分の父がアルコール依存症でした。アルコール依存症の父と娘の私は現在、絶縁状態です。

     

    父は大手企業で部長職までになったので、仕事には支障がなかったのでしょうが、家庭では酒乱。酔って記憶をなくすこと(ブラックアウト)は日常で、父がたまに帰宅すると、姉も私も自分の部屋に引きこもり、母は父を刺激しないよう、ひたすら黙っているという家庭で育ちました。

     

    忙しい職種だったので、家族は救われていた部分が大きかったです。

     

    しかし、父が定年退職を迎え、母が離婚を切り出して、両親は熟年離婚します。そこから娘の私は本格的にアルコールに依存となっていった、父の面倒をみることになっていきました。

     

    父が65歳~73歳、私が36歳~43歳までの10年間は地獄でした。

     

    その間に、父の人間関係はどんどん狭まっていきました。お酒で迷惑をかけては、実の弟妹にも絶縁され、離婚した母はもちろん、母と暮らしている姉とも絶縁。

     

    その間に私は結婚して離婚していますが、結婚生活に影響がなかったかといえば嘘になります。第一印象は婚家の両親の前でも「普通のよい父親」に見える(今思えば、人前で「過剰にいい顔をする」ところがストレスとなりアルコールへの依存を強めていたと思います)けど、お酒が入ると暴言を吐き、トラブルを起こしてしまう。

     

    婚家からも絶縁される父。

    立場がなくなる私。

     

    アルコール依存とホームレスの相関性について、村田らむさんが記事を書いていますが、父も生活が成り立たず、ホームレス支援施設に入り、生活を立て直した時期があります。

     

    ホームレスとアルコール依存症の深刻な関係とは? 酒に溺れ全てを失った人たち

  • 子ども用通帳に貯金しても、子どものために使えなくなる?! ~成年後見人制度の盲点~

    子ども用通帳に貯金しても、子どものために使えなくなる?! ~成年後見人制度の盲点~

    息子は知的障害を伴う自閉症。親亡き後のことを考えて、成年後見人についての知識を得ようと勉強している。

     

    ストレートパーマは贅沢?

    こんな話を聞いた。

     

    天然のチリチリパーマの障害のある娘がいた。本人のとってはコンプレックスだったので、母親は娘が幼い頃から月一回、美容院に連れて行き、ストレートパーマをかけてやっていた。娘にとってはこれが毎月の楽しみであった。更に母親は娘の名義の通帳を作り、貯金していた。

     

     

    月日は流れた。娘は成人したが字を書けず、話す言葉も聞き取りにくい曖昧な言語であった。そこで、母親は自分が死んだ後のことを考え、成年後見人を付けた。

     

     

    ところが思わぬ事態に陥った。後見人がついてからは、親でも子どものお金に触れることが出来なくなったのだ。後見人から「ストレートパーマは贅沢だ」と言われ、貯金を下ろすことができなくなった。

     

     

    後見人は一度付けると外すことは出来ない。また「この後見人とは価値観が合わないから別の人に変えてほしい」と家庭裁判所に申し立てたとしても、後見人を変えることはできない。

     

     

    「何のために本人名義にして、コツコツ溜めていたのか、娘のお金なのに自由に使えないのならば、娘のために使うお金として自分(=母親)の口座に全て入れておいた方がよかった」と悔やんでも後の祭りであった。

     

     

    成年後見人制度がよくないということではない。この制度は親であっても、子どものお金を着服できないようにする、あくまでも当事者(=障害のある子)の財産を守るためにある制度である。ただ、あまり早々付けないで親が元気なうちは後見人を付けない方が賢明だと思う。

  • 「出来損ない」と呼ばれた犬 ~虐待のトラウマに苦しみながら障害者や高齢者を癒し続けたその一生~ 

    「出来損ない」と呼ばれた犬 ~虐待のトラウマに苦しみながら障害者や高齢者を癒し続けたその一生~ 

    アニマルセラピーという言葉をご存じな方もいるだろう。

     

    セラピーには「治療」という意味がある。動物と触れ合うことで人が「癒し」を得られるだけでなく、治療効果があるということは古代より知られていた。

     

    アニマルセラピーは、大きく2つに分類される。医師や臨床心理士といった医療従事者が治療のサポートとして動物を用いる動物介在療法(Animal Assisted Therapy, AAT)と、

    動物とのふれあいを通じた生活の質の向上を目的とする動物介在活動(Animal Assisted Activity, AAA)。

     

    アニマルセラピーの歴史は長く、古くは古代ローマ時代までさかのぼりる。負傷したローマ兵士の痛みを緩和し、心を癒したという。用いられる動物は、犬猫はもちろんのこと、馬やイルカ、野鳥など様々だ。

     

    そのため、障害者施設、老人介護施設、児童養護施設、刑務所や病院の緩和病棟など、ボランティアのセラピストが同行し、主に犬や猫が人々を癒している。

     

    家庭でペットを飼う事も、アニマルセラピーの一種だ。

    事実、ペットを飼っている人は飼っていない人より、年間20%前後病院に行く回数が減ったと言うデータがある。

    ドイツでは7500億円、オーストラリアでは3000億円もの医療費が、ペットの影響によって削減されている。

     

    心臓疾患の患者に対する調査では、ペットを飼っている人は1年後に53人中3人死亡、飼っていない人は1年後に39人中11人死亡と言う、死亡率に大きな差が生じることが分かった。 一方、施設で長期に渡り生活をしている高齢者や障害者は、犬などと触れ合う事により会話や笑顔が増え、表情の変化などの改善も見られる。

    このように、ペットによる治療効果は高く評価されている。

    (引用 NPO法人 日本アニマルセラピー協会https://animal-t.or.jp/html/about-animaltherapy/more-animaltherapy.html )

     

    筆者はアニマルセラピーを知ったときに、人間は癒されるし、治療効果があるかもしれないけど、犬や猫はストレスが溜まらないのか?と思ったことがある。

     

    だけど、ケアマネージャーをしている友人が飼っていたセラピードック「Pちゃん」の話を聞き

    特に犬にとり、人間との触れ合いはいい効果をもたらすことを知った。

     

    (生きていた頃のPちゃん)

     

    Pちゃんは友人が動物愛護センターから引き取った、お年寄りのトイプードル。元々は警察犬としての訓練を受けていたが、「出来損ない」と言われて、虐待され、心にも体にも傷を負っていた。捨てられたPちゃんは、友人に引き取られ、セラピードックになった。

  • 自分の部屋が「ゴミ屋敷」だという自覚がない人たち。「ゴミなんて1つもないんだから、勝手に捨てないで!!」と清掃員に怒号が飛んだ。

    自分の部屋が「ゴミ屋敷」だという自覚がない人たち。「ゴミなんて1つもないんだから、勝手に捨てないで!!」と清掃員に怒号が飛んだ。

    『病識』という言葉がある。
    自分自身が病気だという自覚がある、という意味だ。
    はたから見ていたら、あからさまに病的な症状が出ている場合でも、本人は
    「自分は病気ではない」
    と思っているケースがあり、
    「病識がない」
    と言われる。統合失調症や認知症では、病識がない人が多く見られるそうだ。
    本人は病気と思っていない場合、治療がなかなか進められないなど問題も起こる。

    僕は、2年以上に渡りゴミ屋敷の清掃を請け負う会社で働いた。
    ほとんどの現場は一人ではどうしようもないレベルのゴミ屋敷だった。ひどいゴミ屋敷だと、ゴミの量も恐ろしいことになる。

    ある広めの2Kのゴミ屋敷には、10年分のゴミが溜め込まれていた。ゴミの層は床から1.5メートルほどの厚さがあった。
    何往復もしてゴミを出した結果、2トンロングのトラック4台分のゴミと、軽トラ一台分の本のゴミが出た。
    「2トンロング4台分じゃあ、部屋の体積よりも大きいんじゃないの?」
    と疑う人もいるかもしれない。
    住人は、毎日ゴミを踏んで生活していたのだ。特に玄関あたりは毎日何度も踏むので、カッチカチに固まっている。清掃する時は、土を掘り起こすような感じになる。
    そして掘り出した途端にゴミは空気を吸って膨らむのだ。ゴミ袋に入れる時は、あまり詰め込みすぎると破れてしまうから、わざとフワフワな感じで詰め込む。トラックに詰め込む時に再度圧縮できるわけもない。結果的に、2Kの部屋の体積を超える大量のゴミが排出されることになるのだ。

    僕が働いていた業者では依頼人のほとんどは、ゴミ屋敷を作った本人だった。
    「いつか片付けよう……」
    と思っているうちにゴミがたまり、一人ではどうしようもなくなってしまう。それでネットで業者を検索して、連絡をしてくる……という流れだ。
    だから、もちろん本人は自分の部屋がゴミ屋敷であることは認識している。会うなり、

    「すいません、こんな部屋で……」

    と謝られることも多かった。

  • 間違いだらけの薬選び ~現役薬剤師が語る「絶対ダメ」な薬の飲み方とは?~

    間違いだらけの薬選び ~現役薬剤師が語る「絶対ダメ」な薬の飲み方とは?~

    今回は、昭和大学 薬学部を卒業後、薬の相談と依存症回復者への職業紹介をメイン業務としている、神奈川県大和市の株式会社トラスト ReStartくすり相談所 代表取締役で薬剤師の井田鉄平さんにお話を伺った。

     

     

    井田さんは大学を卒業後、17年間、調剤薬局で薬剤師として勤務した。しかし、高齢化が問題となっている現在、特に既往症が多い高齢者に対する薬の処方量の多さが気になっていた。薬剤師の視点から見ると、成分が重複する薬がいくつも処方されている現状があり、薬の副作用から体調を壊す人々を見てきた。そんな人を一人でも減らしたいという思いから、起業した。

     

    今、薬の安易な処方による多剤大量処方とドラッグストアで購入できる市販薬により、薬物依存になる人が増えている。風邪をひいたら、頭痛がしたら、気軽な気持ちで薬を服用する人も多いのではないか。中には依存性がある成分が含まれている薬も多い。特に精神科で処方される薬には依存性が高い薬が多いという。その背景と薬のリスクについて、話していただいた。

     

    「お医者さんは薬の足し算(薬を追加すること)は得意でも、引き算(薬を減らすこと)は苦手な方が多いです。なので、通院すればするほど、薬の量が増えていくことが多いですよね」

     

    井田さんが言う通り、定期的に病院を受診している方なら、薬の量が増えていくという経験のある方は多いのではないか。そして、その薬の効果がかぶっている、副作用で下痢する、便秘する、ふらつく、めまいがするなどの副作用については説明される機会は少ない。薬の副作用で便秘をすれば、便秘薬が追加され、めまいが出たら、めまいを抑える薬が追加される。それでは薬の処方数が増えて当たり前だ。

     

    「病院で待たされて、さらに処方薬局でも待たされたら嫌ですよね、なので、20分、30分と患者さんを薬局でお待たせするわけにはいきません。なので、薬剤師は色々アドバイスをしたくてもできない事が多いです」

     

    特に大学病院や総合病院での待ち時間は長い。診察で待って、薬局でも待つことは多くの人が嫌うだろう。すぐにでも薬を受け取って帰りたい。それが患者側の本音だろう。だけど、医師は薬の専門家ではない。処方されている薬の効果と副作用についての知識を持っているのは薬剤師にも関わらずだ。

  • 彼女が、リストカットをする理由とは? 明日を生きるために自らを傷つける人もいる。

    彼女が、リストカットをする理由とは? 明日を生きるために自らを傷つける人もいる。

    今回、お話を伺うWさんは35歳のシングルマザーだ。お子さんは、小学生になる。彼女はいたって社交的で、明るい雰囲気だ。そんな彼女の両腕にはおびただしい数の傷跡が並んでいた。ちょっと圧倒される量だ。

     

     

    「これでも最近は治ってきたんですよ。子供が生まれてからは一応自制しているので」とWさんは言う。

    当時は一本一本の傷跡が、ミミズのように腫れていたという。「初めてリストカットしたのは11歳の時ですね。小学校5年生。もう24年も前になります」Wさんは、その当時学校で凄惨なイジメにあっていた。あだ名は「豚」「家畜」だった。クラスメイトには、「豚はしゃべるな!! ブーブーと言え!!」と嘲られた。
    机には「死ね」と彫られ、ロッカーや跳び箱に閉じ込められて放置され、ほうきで殴られた。でも、親には相談できなかった。

     

    「もともと私は人と話すのが下手なんです。ちょっとでも恥だと感じると言えなくなってしまうんです」

    「親に心配をかけたくない」
    「直面している事実を受け入れたくない」
    「自分が親に言ったことで、大事になるのが嫌だ」
    と複雑な感情がからみあい、結局誰にも相談できなかった。そしてストレスが彼女の心を蝕んだ。

     

    「はじめは安全ピンでした。安全ピンで腕を引っ掻いてましたね。なぜそんなことをはじめたのか、理由はわかりません。学校や家族で溜まったストレスをどこかに八つ当たりしたくて、でも結局ぶつける場所がなくて、自分にぶつけていたのかもしれません。その頃は、自傷癖は親にも先生にもバレていなかったと思います」
    中学校に入って、身体を傷つける道具が安全ピンから、ハサミになった。ハサミで身体を切るというと、すごく痛そうだが、それには理由があった。
    「私って切る時にすごい力をこめちゃうタイプなんですね。だからカミソリやカッターだと深く切れ過ぎちゃうんです。ハサミは切れ味が、さほど良くないので、力を入れてもそこまでは切れないんですね」深く切りすぎると救急車を呼んだり、入院したり、めんどくさいことが多くなる。家族に気づかれて、迷惑がられるのは嫌だった。

     

    「だけど家族にはどこかで気づいて欲しかったと思います。でも毎日リスカをしても、気づいてもらえませんでした。15歳くらいの時に『私は精神障害かもしれない』って母親に相談したことあったんです。そうしたら、母親は『あなたはそういう(サブカル的な)本や漫画を読んで、それに憧れてるだけだから』と言いました。私は誰からも理解されてないし、受け入れられてないんだな、って泣きながら笑いました」ハサミは切れ味が悪いが、それでもパカッと肉が開いてしまうくらいには切れる。

     

    「すごく手際がよくなりました。ハサミはリストカット専用のを持っていて、使った後はきちんと消毒液で殺菌してました。止血の準備などをして、決めた音楽をかけてから、スパッといってました。傷口は応急処置として瞬間接着剤で固めることもありました」中学校を卒業しても、高校へは進学しなかった。フリーターになって夜中まで起きているようになった。夜中なら親の目を気にせずカットができるので、自傷行為はどんどんエスカレートしていった。リストカットでは手首を切るが、Wさんは腕の外側も切った。その行為は、アームカットと呼ばれる。左腕に切る場所がなくなると、右腕も切った。15歳くらいからは、タバコの火を押し付ける、いわゆる根性焼きもするようになった。腕にもう傷つける場所がなくなるとお腹や足も切るようになった。傍から見ていると、痛くてたまらない行為に見えるが本人はそんなことはないという。

     

    「カットをする時は、心がひどくダメージを受けている時なんですよ。そういう時は何をやってもあんまり痛みを感じないんです。切った後は精神的に安定します。血が流れているのを見ると、安心感で満たされます。むしろ、身体に生傷がないと落ち着かないくらいでした」

    傷が増えていくことに関しては、何も考えていなかった。将来傷があることでアルバイトの面接などで困ることになるなど想像もしていなかった。

     

    「カットって『かまって欲しい』って気持ちがこめられている場合も多いと思うんですけど、私の場合『かまわないで欲しい』っていう気持ちも強くありました」
    生傷があったり、ぐるぐると包帯を巻いている人には、なかなか他人が関わってくることはない。Wさんは顔にピアスを開けたし、入れ墨も入れたが、それにも同じような意味があった。「近寄らないで!!」というサインなのだ。小学生時代からイジメられ続けた、彼女なりの防御の方法だった。

     

    Wさんはその後結婚したが、あまり幸せにはなれなかった。20歳の時、部屋に行くと夫の横に裸の女が寝ていた。旦那はWさんに土下座をすると、「この子と結婚したいから、頼むから離婚してくれ」と言った。

     

    「元夫の浮気で、心身ともにボロボロになりました。離婚して私が出ていくことにしましたが、なんだか無性に悔しくて嫌がらせをすることにしました」夫の部屋に、大きな血溜まりを作ってやろうと思った。部屋に入ってきて、床が血だらけだったら、さぞかし夫は嫌な気持ちになるだろう、と考えた。だが、いつも使っているハサミはすでに引っ越しで片付けてしまっていた。代わりになるものはないか探したら、洗面所に安全カミソリがあった。カミソリやカッターではリストカットはしないというのが彼女の不文律だったが、その時ばかりは掟を破った。

     

    「安全カミソリでガッと手首を切りました。血がダバダバと溢れました。傷口からは、血管、脂肪、筋、がハッキリ見えて『おお……人体だ』と思いました」

     

    血は目論見通り、床に溜まっていった。これを見たら、夫はどんなにか嫌な気分になるだろうと思う。だが、このまま流血したら死ぬな……と感じた。
    「小さい頃から死にたかったんです。だから死んでもいいんですけど、でもその時は死ぬのに納得できなかったんです。……なんか理不尽じゃないですか(笑)」
    Wさんはがんばって自分で止血をした。なんとか血を止めると、片手で119番に電話をかけ、「手首を切ったら、血が止まらなくなりました」と素直に言った。部屋に来た救急隊員は、「血の汚れを掃除をしましょうか?」とWさんに聞いたが、「絶対に掃除しないでください!!」と答えた。ここで掃除をされてしまったら、手首を切った意味がなくなってしまう。

     

    救急車に乗っている間は、自分で血を押さえていた。だから、あまり重症じゃないと思われたのかもしれない。病院についても、20分は待たされた。自分で止血するのが限界になり「まだでしょうか?」と看護婦に伝えると、ではどうぞと診察室に通された。「とりあえず、手を離してもいいですよ」と若い医者は言った。Wさんは躊躇しながらも、医者の指示にしたがった。血は再びダバダバと溢れた。医者と看護師は血相を変えた。近くにいた経験豊富な小児科の先生が来て縫ってくれた。8針縫った。血管と一緒に神経も切れてしまったため、ちゃんと動かせるようになるまで、自宅でリハビリするはめにはった。

     

    「元夫とはそれ以来会ってません。慰謝料を請求したら素直に支払われました。床の血が効いたのかもしれませんね」
    そうしてWさんは、リストカットと長く付き合ってきた。物事を、善か悪かで単純に分けるなら、自傷行為は悪い行いなのかもしれない。だけど、Wさんは身体を刃物で傷つけることによって、自分を守ってきた。「15歳の時に精神科に行ったら、女医さんに『じゃあとりあえず、一週間リストカットしないでね』って言われました。タバコだってそう簡単にやめられないですよ。初めて会ったあんたに、やめろって言われて『はいやめます』ってやめられるんなら苦労しないんだよ、って憤りました」

     

    「見ていて痛々しいからやめろ」
    「親からもらった身体を傷つけるな」
    などと自傷癖を止める人はたくさんいたが、Wさんの胸には響かなかった。「リストカットしか逃げ道がない人から、それをうばったら、逆に死んじゃいますよ。それでなんとか心の均衡を保っているんだから」

     

    その後、Wさんには子供ができた。2番目の夫は出産の時には刑務所に入っていて、その後離婚した。子供ができて、生活は一変した。生きていたいと思えるようになった。子供の手前、リストカットもやめた。「でも実は、自傷したくなる気持ちは抜けていません。他人から攻撃を受けたときなど、すごくやりたくなります」

     

    Wさんのイメージはこうだ。バケツにポツポツと水がたまり、一杯になる。Wさんはバケツを引っくり返して、その水を捨てたいと思っている。だけど、バケツを引っくり返すことは禁止されている。水はずっとたまりっぱなしになっている。バケツにたまった水は彼女を圧迫し続ける。“バケツをひっくり返す”という行為が、彼女にとっては自傷行為なのだ。「今は我慢してやめてますけど、でも本当に苦しくなったらリストカットしようと思ってます。死ぬよりはずっといいですからね!!明日からポジティブに生きていくためなら、全然自傷行為しますよ」と、Wさんはとても明るく言った。

     

  • 【書評】「統合失調症日記」 ~100人に1人弱が発症。統合失調症を当事者が描く漫画~

    【書評】「統合失調症日記」 ~100人に1人弱が発症。統合失調症を当事者が描く漫画~

    本日は「統合失調症日記」(ぶんか社コミックス) Kindle版

    (c)木村きこり/ぶんか社
    現在、Kindle Unlimitedの会員であれば、無料で読めるのでぜひ、読んでいただきたい。

    作者の木村きこりさんは、高校3年生のときに発病した。統合失調症は民族や文化や時代に関係なく、100人に1人弱が発症する精神疾患だが、精神病患者は長く隔離されてきたという歴史もあり、なじみが薄くあまり知られていない。

     

     

    (c)木村きこり/ぶんか社

     

    統合失調症のメカニズムはまだ解明されていないが、その素因を持った人がストレスをきっかけで発症するのではないかといわれている。きこりさんは受験がプレッシャーとなったのか、症状が出始める。最初は文字がにじみ、視力検査を受けたが異常はない。そのうち、文字が絵に見えるようになった。

     

    頭の中に映像が浮かび神の指令だと信じて踊りだすなど、周りから見ると奇妙な言動が目立つようになる。そんな中で、勉強は手につかず、成績は落ちていった。その結果、浪人生活を余儀なくされる。

     

    絵が好きだったきこりさんは芸大を目指し、予備校生活を送る。だけど、病気の影響でどんどん言動はちぐはぐになっていく。

     

    (c)木村きこり/ぶんか社

     

    自宅に引きこもるようになっていった彼女には、病識(自分を病気だと認めること)がなかった。統合失調症の症状は主に幻覚、幻聴や妄想などだか、病識を持てないというのも一つの特徴だ。なので、幻覚や妄想が、病気による症状であることに自分で気づくことができない。

     

    きこりさんが母親を首を絞めて殺してしまいそうになったことで、母親はやっと精神科への受診を勧める。そこで統合失調症と診断を受ける。